虫歯治療

虫歯治療について

虫歯は日本人の約9割が経験する身近な歯科疾患です。初期段階では痛みを感じにくく、気づいた時には既に進行していることが多いため、定期検診での早期発見と適切な治療が重要です。あいあーる歯科では、患者様一人ひとりの虫歯の進行度に合わせた最適な治療法をご提案し、可能な限り歯を削らない低侵襲治療を心がけています。

虫歯の進行段階と症状

虫歯は進行度によってC0からC4の5段階に分類されます。それぞれの段階で症状と治療方法が大きく異なるため、正確な診断が重要です。

C0（初期虫歯・脱灰）

歯の表面が白っぽく濁った状態で、まだ穴は開いていません。この段階では削る必要はなく、フッ素塗布や適切なブラッシング、食生活の改善により再石灰化を促すことで健康な状態に戻すことが可能です。定期的なメンテナンスにより進行を防ぐことができます。

C1（エナメル質の虫歯）

歯の表面のエナメル質に小さな穴が開いた状態です。痛みはほとんど感じませんが、冷たいものがしみることがあります。この段階での治療は比較的簡単で、虫歯部分のみを最小限削り取り、白いコンポジットレジン（CR）で修復します。治療回数は1回で済むことが多く、見た目も自然に仕上がります。

C2（象牙質に達した虫歯）

虫歯がエナメル質を越えて象牙質まで進行した状態です。冷たいものや甘いものがしみるようになり、時に痛みを感じることもあります。C2の治療では、虫歯の範囲によって治療法が変わります。小範囲の場合は1回の治療でCR充填を行い、大きな範囲の場合は型取りをして詰め物（インレー）やかぶせ物（クラウン）を作製します。神経保護のため、特殊な薬剤を使用して経過観察を行うこともあります。

C3（神経に達した虫歯）

虫歯が歯の神経（歯髄）まで進行した状態で、激しい痛みを伴います。この段階では根管治療（歯内療法）が必要になります。感染した神経を除去し、根管内を清掃・消毒した後、薬剤を詰めて密封します。最終的には土台を立ててかぶせ物で保護し、歯の機能を回復させます。治療期間は通常3〜5回程度です。

C4（歯根まで破壊された虫歯）

歯冠部分がほとんど失われ、歯根のみが残った状態です。多くの場合、抜歯が必要になりますが、歯根の状態によっては根管治療により保存できる場合もあります。抜歯後はインプラント、ブリッジ、部分入れ歯などの選択肢から最適な治療法をご提案します。

虫歯ができる原因

虫歯は単一の原因ではなく、複数の要因が重なることで発生します。口の中に存在する細菌（主にミュータンス菌）が食べ物や飲み物に含まれる糖分を餌として増殖し、酸を産生します。この酸が歯のエナメル質を溶かすことで虫歯が始まります。

虫歯発生の4つの要因

細菌（バイオフィルム）

口腔内には常在菌として数百種類の細菌が存在しています。その中でも特にミュータンス菌やラクトバチルス菌などの虫歯原因菌が、歯の表面に付着してプラーク（歯垢）を形成します。このプラークは単なる食べカスではなく、細菌の塊であるバイオフィルムです。

糖質（基質）

虫歯原因菌は糖分を栄養源として酸を産生します。特に砂糖（ショ糖）は最も虫歯を作りやすい糖質です。お菓子やジュースだけでなく、米やパンなどの炭水化物も口の中で分解されて糖になるため、虫歯のリスク要因となります。

歯質（宿主要因）

歯の質には個人差があります。エナメル質の厚さや密度、唾液の性質（量・質・緩衝能力）などが虫歯の発生しやすさに影響します。また、歯並びが悪い場合は清掃が困難になり、虫歯リスクが高まります。

時間

虫歯原因菌が酸を産生してから歯が溶け始めるまでには一定の時間が必要です。食後約3分で口の中のpHが酸性に傾き、約40分間酸性状態が続きます。この間に唾液の働きで中性に戻りますが、頻繁な間食により酸性状態が長時間続くと虫歯が進行しやすくなります。

虫歯を進行させる生活習慣

1. 不規則な食生活だらだら食いや頻繁な間食
2. 糖質の過剰摂取甘い飲み物の常飲、お菓子の習慣的摂取
3. 不適切な口腔ケア歯磨きの不備、フロスの使用不足
4. 唾液分泌の低下薬の副作用、口呼吸、加齢による影響
5. 酸性飲料の摂取炭酸飲料、果汁100%ジュース、スポーツドリンクの習慣的摂取

虫歯治療の特徴

虫歯治療は、虫歯の深さ・範囲・発生部位によって治療方法と治療期間が大きく異なります。虫歯の進行度を正確に診断し、患者様の状態に最も適した治療法を選択することが重要です。

虫歯の深さによる治療の違い

浅い虫歯の場合

初期の浅い虫歯は治療における患者様の負担が比較的軽微です。処置回数は通常1回で完了し、治療時間も30分程度と短時間で済みます。削る量も最小限に抑えられるため、歯への侵襲が少なく、白いコンポジットレジンで修復することで見た目も自然に仕上がります。費用面でも保険適用内で治療が可能なため経済的負担も軽減されます。

深い虫歯の場合

虫歯が深く広範囲に及んでいる場合は、より慎重で複雑な治療が必要になります。虫歯を完全に除去するために健康な歯質も多く削らざるを得ないことがあり、その結果として治療回数が2〜4回程度必要になります。また、型取りをして詰め物やかぶせ物を作製するため、治療期間も1〜2週間かかることが一般的です。

神経に達した虫歯の特殊性

歯の神経にまで虫歯が進行した場合、歯の構造的強度が著しく低下します。神経を除去した歯は栄養供給が断たれるため、経年的に歯質が脆くなり破折のリスクが高まります。このため、歯を補強し保護する目的でかぶせ物による治療が必須となり、より多くの歯質を削る必要があります。

治療後の症状について

虫歯が神経に近い位置まで進行していた場合、治療後に一時的な症状が現れることがあります。冷たい食べ物や飲み物がしみる知覚過敏症状や、噛んだ際の違和感、軽度の痛みなどが1〜2週間程度続く場合があります。これらの症状は通常自然に改善しますが、症状が強い場合や長期間続く場合は追加の処置が必要になることもあります。

虫歯治療の流れ

虫歯の進行度に応じて、治療方法と手順が異なります。当院では患者様の状態に最も適した治療法を選択し、丁寧に治療を進めてまいります。

1.初期虫歯(C1)の治療

対象：噛む面や歯間部の浅く小さな虫歯

1. 麻酔と虫歯除去 必要に応じて局所麻酔を行い、十分に効果を確認してから治療を開始します。虫歯の位置や深さに応じて最適な切削器具を選択し、感染した歯質のみを精密に除去します。治療中に痛みを感じられた場合は、即座に追加麻酔を行います。健康な歯質を最大限保存しながら、虫歯の取り残しがないよう徹底的に除去することが重要です。
2. 歯面処理と接着準備 削った部分をエッチング剤で約10秒間処理し、歯面を清浄化します。その後、専用の接着剤（ボンディング材）を塗布し、10〜20秒間光照射して歯面の接着性を高めます。この工程は化粧の下地作りに似ており、その後の修復材料がしっかりと接着するための重要な準備段階です。
3. コンポジットレジン充填 歯の色調に合わせたコンポジットレジン（CR）を層状に充填します。このCRは光重合型の樹脂材料で、自然な透明感と強度を併せ持っています。技術的には「白いキャンバスに絵を描く」ような繊細な作業で、天然歯に近い色調と形態を再現していきます。
4. 形態調整と研磨仕上げ 硬化後、専用器具を使用して噛み合わせと歯の形態を精密に調整します。この工程は治療の成否を左右する最も重要な段階です。機能性と審美性の両方を確保するため、細部まで丁寧に仕上げ研磨を行い、滑らかで自然な表面に仕上げます。

2.中等度虫歯(C2)の治療

対象：奥歯の歯間部や比較的深い虫歯

1. 虫歯の除去 局所麻酔下で、虫歯に感染した歯質を完全に除去します。深い虫歯の場合、様々な切削器具を使い分けて安全かつ確実に処置を行います。歯髄（神経）に近い部分では特に慎重に作業し、痛みが生じた場合は適宜追加麻酔を行います。
2. 歯髄保護処置 神経に近い部分まで虫歯が進行している場合、歯髄を保護するための薬剤を塗布します。カルシウムイオンを放出する生体親和性の高い材料を使用し、歯髄の治癒を促進します。当院では長年の実績がある信頼性の高い材料を選択しています。
3. 経過観察期間 歯髄保護処置後、一定期間（通常1〜2週間）様子を観察します。この期間は患者様の症状、虫歯の深さ、使用予定の修復材料などを総合的に判断して決定します。この期間中の来院中断は症状悪化につながる可能性があるため、必ず継続的な通院をお願いしています。
4. 最終修復物の装着 症状が安定したことを確認後、型取りを行い詰め物を作製します。装着時は材質に応じて調整方法が異なりますが、金属製の場合は事前調整後に接着し、セラミック製の場合は接着後に最終調整を行うことが一般的です。いずれの方法でも美しく機能的な仕上がりを実現します。

3.重度虫歯(C3)の根管治療

対象：歯髄（神経）まで達した虫歯

1. 根管開放と歯髄除去 歯冠部を削って歯髄腔への入口を作り、専用器具を使用して感染した歯髄を完全に除去します。この作業は煙突掃除に例えられ、根管内の汚染物質を徹底的に除去します。炎症がある歯では麻酔が効きにくい場合があるため、麻酔方法や量を調整して患者様の痛みを最小限に抑えます。
2. 根管洗浄・消毒 歯髄除去後、根管内を専用の薬剤で洗浄・消毒します。この工程は浴室清掃に似ており、機械的清掃（器具による清掃）と化学的清掃（薬剤による消毒）を組み合わせて、根管内を無菌状態に近づけます。
3. 根管充填 根管内が清潔になったことを確認後、ガッタパーチャという生体適合性の高いゴム様材料で根管を密封します。この作業はワインボトルにコルクで栓をするように、細菌の侵入を完全に防ぐための重要な処置です。密封が不十分だと再感染のリスクが高まります。
4. 支台築造とクラウン装着 根管治療完了後、歯の強度を補強するための土台（コア）を立て、最終的なかぶせ物（クラウン）を装着します。神経を失った歯は栄養供給が断たれるため、枯れ木のように脆くなります。破折や再感染を防ぐため、二重の保護システムにより歯を守ります。

4.保存不可能な虫歯(C4)の処置

対象：歯冠が崩壊し保存困難な虫歯

抜歯処置

保存が困難と判断された歯は、患者様と十分相談の上で抜歯を行います。局所麻酔を確実に効かせた後、専用器具を使用して周囲組織への損傷を最小限に抑えながら歯を除去します。必要に応じて歯や骨の一部を削除して抜歯しやすくし、術後は止血剤の填入と縫合により適切な治癒環境を整えます。

抜歯後は、インプラント・ブリッジ・部分入れ歯などの補綴治療により、失った歯の機能回復を図ります。

虫歯治療のよくある質問

治療時間はどのくらいかかりますか？

虫歯の大きさにより異なりますが、小さな虫歯（C1）なら30分程度、大きな虫歯（C2・C3）は1時間程度です。

治療後に痛みはありますか？

深い虫歯の場合、術後2〜3日程度軽い痛みや違和感を感じることがありますが、徐々に改善します。

銀歯を白い歯に替えることはできますか？

可能です。セラミックやコンポジットレジンを使用し、天然歯に近い白さと透明感を再現できます。

虫歯治療は保険適用されますか？

基本的な虫歯治療は保険適用されます。審美性を重視した材料をご希望の場合は自費診療になる場合があります。