親知らず

親知らずについて

親知らずは、歯並びの一番後ろに生える第三大臼歯のことで、前から数えると8番目に位置する歯です。一般的に18〜20歳頃に生えてきますが、生えてくる時期や生え方には大きな個人差があります。人によっては顎の中に埋まったまま生えてこない場合や、元々親知らずがない場合もあります。

親知らずの名前の由来

「親知らず」という名前の由来は、この歯が生えてくる20歳前後の年齢では、親は子どもの口の中の状態を詳しく知らないことから名付けられたといわれています。

英語では「wisdom tooth（智歯）」と呼ばれ、これは物事の分別がつく年頃になってから生えてくることに由来しています。日本語でも別名として「智歯（ちし）」と呼ばれることがあります。

親知らずを
抜歯する必要がある場合

すべての親知らずを抜歯する必要があるわけではありません。以下のような状況の場合に抜歯が推奨されます。

1. 智歯周囲炎 親知らずが正常に生えずに歯茎が被った状態になると、その隙間に食べ物が詰まりやすく細菌が繁殖しやすくなります。これにより歯茎が腫れ、痛みや口臭を引き起こします。重症化すると顔まで腫れることもあります。
2. 虫歯 親知らずは歯ブラシが届きにくい位置にあるため、虫歯になりやすい環境にあります。また、親知らずの虫歯は隣の歯（第二大臼歯）に影響を及ぼすことも多く、放置すると複数の歯に虫歯が進行する可能性があります。
3. 歯周病 清掃困難な親知らず周辺は歯周病が進行しやすく、隣接する歯の歯周病も悪化させる原因となります。歯周病が進行すると歯を支える骨が溶けて歯が抜けてしまう可能性があります。
4. 歯並びへの影響 萌出途中の親知らずが隣の歯を押すことで、歯並びの乱れを引き起こすことがあります。特に矯正治療後の後戻りの原因となることもあります。
5. 嚢胞の形成 完全に埋まった親知らず（埋伏智歯）の周囲に嚢胞が形成されることがあります。嚢胞が大きくなると顎の骨を圧迫し、神経麻痺や病的骨折の原因となることもあります。

親知らずを残すべき場合

以下の場合は親知らずを保存することもあります。

親知らずの生え方による分類

垂直埋伏

親知らずは正常な方向を向いているが、スペース不足のため完全に萌出できない状態です。比較的抜歯しやすいケースが多いです。

水平埋伏

親知らずが横向きに倒れている状態です。隣の歯の根を圧迫したり、清掃が困難になりやすいため、抜歯が推奨されることが多いです。

斜め埋伏

親知らずが斜めに傾いている状態です。傾きの程度により抜歯の難易度が変わります。

完全埋伏

親知らずが完全に骨の中に埋まっている状態です。症状がなければ経過観察することもありますが、嚢胞形成のリスクがある場合は抜歯を検討します。

当院の親知らず抜歯の特徴

即日抜歯対応

通常、病院等の口腔外科では初診で親知らず抜歯の説明と同意を得て、2回目以降に抜歯という流れが一般的です。これは大学病院や大きな病院でのルーティンになっており、初診時に抜歯することはほぼありません。当院では患者様の通院負担を軽減するため、可能な限り初診当日に説明・同意・抜歯まで対応しています。

精密な術前診断

デジタルレントゲンやCTを使用して、親知らずの位置、形態、周囲組織（特に下顎管神経）との位置関係を詳細に把握します。これにより安全で確実な抜歯計画を立案します。

低侵襲抜歯法

従来の方法よりも体への負担が少ない抜歯手技を採用しています。適応症例では無切開抜歯や歯冠切除術（コロネクトミー）などの先進的な方法を用いることで、術後の腫れや痛みを軽減します。

適切な痛みのコントロール

効果的な麻酔により抜歯中の痛みを最小限に抑えます。術後の痛みについても、適切な鎮痛薬の処方により快適に過ごしていただけるよう配慮しています。

親知らず抜歯の流れ

1. 診査・診断 患者様の症状をお聞きし、口腔内の状態を確認します。レントゲンやCT撮影により親知らずの位置、形態、周囲の血管や神経との位置関係を詳しく調べます。抜歯の必要性、リスク、治療方針について丁寧に説明いたします。
2. 抜歯前準備 抜歯部位および周囲組織に局所麻酔を行います。麻酔は歯の周りに十分に浸透するよう時間をかけて行い、痛みを感じないことを確認してから処置を開始します。
3. 抜歯処置 親知らずの生え方や埋伏状態に応じて、適切な器具を使用して慎重に抜歯を行います。必要に応じて歯茎の切開や骨の削除、歯の分割などを行い、周囲組織への損傷を最小限に抑えながら抜歯します。
4. 止血・縫合 抜歯窩に止血用のコラーゲンスポンジを填入し、必要に応じて縫合を行います。適切な圧迫により止血を確認し、ガーゼを噛んでいただいて終了します。
5. 術後管理 抜歯後の注意事項をご説明し、必要に応じて抗生物質や鎮痛薬を処方します。縫合した場合は、約1週間後に抜糸のため来院していただきます。

当院の特殊な抜歯手技

無切開抜歯

従来の親知らず抜歯では歯茎の切開が必要でしたが、CTやレントゲンによる正確な診断により、切開せずに抜歯を行う方法です。これにより術後の腫れや痛みを大幅に軽減できます。ただし、すべての親知らずに適応できるわけではないため、詳細な診査・診断が必要です。

歯冠切除術（コロネクトミー）

親知らずが下顎神経と近接している場合に適応される特殊な術式です。親知らずを完全に抜歯せず、上部（歯冠）のみを除去し、神経に接している下部（歯根）は残します。これにより神経麻痺のリスクを大幅に軽減できます。

即日抜歯について

即日抜歯の条件

初診当日の抜歯をご希望の場合は、事前にお電話でその旨をお伝えいただくとスムーズです。以下の場合は当日抜歯が困難なことがあります。

即日抜歯の流れ

1. 電話予約 お電話でご予約の際に「親知らずの即日抜歯を希望します」とお伝えください。当日の予約状況や処置時間を確保するため、事前のご連絡をお願いしております。症状についても簡単にお聞かせいただけるとスムーズです。
2. 来院・診査 ご来院後、レントゲンやCT撮影を行い、親知らずの位置・生え方・周囲の神経や血管との距離を詳しく確認します。この精密な診査により、安全かつ的確な抜歯計画を立てることができます。
3. 説明・同意 診査結果をもとに、抜歯の必要性や具体的な手順、術後に起こりうるリスクについて丁寧にご説明します。ご不明な点やご不安なことがあれば、遠慮なくご質問ください。ご納得いただいてから処置に進みます。
4. 抜歯処置 十分な量の麻酔を行い、痛みを感じない状態で抜歯を進めます。患者様の負担を最小限に抑えるため、できる限り短時間で安全に処置を完了できるよう努めております。
5. 術後管理 抜歯後の過ごし方や食事の注意点、出血・腫れへの対処法を詳しくご説明します。痛み止めや抗生物質などのお薬を処方しますので、指示に従って服用してください。

抜歯後の注意事項

当日の注意事項

1. 出血について 軽度の出血は正常です。ガーゼを30分程度噛み続けてください。
2. 食事 麻酔が切れるまで（約2-3時間）は食事を控えてください。
3. 入浴 長時間の入浴や激しい運動は出血の原因となるため避けてください。
4. うがい 強いうがいは血餅を除去してしまうため避けてください。

数日間の注意事項

1. 喫煙・飲酒 治癒を遅らせるため1週間程度控えてください。
2. 硬い食べ物 抜歯部位に刺激を与える硬い食べ物は避けてください。
3. 歯磨き 抜歯部位は避けて、他の部位は通常通り清掃してください。
4. 処方薬 指示通りに服用してください。

全身疾患をお持ちの方への配慮

当院では以下の全身疾患をお持ちの患者様にも適切に対応いたします。

糖尿病の方

血糖値のコントロール状況を確認し、主治医との連携により安全に抜歯を行います。感染リスクが高いため、術前術後の管理を慎重に行います。

心疾患の方

抗凝固薬を服用されている場合は、休薬の必要性について主治医と相談します。必要に応じて止血管理を強化します。

高血圧の方

血圧が安定している場合は通常通り抜歯可能です。緊張により血圧が上昇する場合は、リラックスできる環境作りに配慮します。

親知らずの抜歯は、患者様の状況により大きく異なる処置です。当院では患者様一人ひとりの状態に応じた最適な治療法をご提案し、安全で快適な抜歯を心がけています。親知らずでお困りの方は、お気軽にご相談ください。経験豊富な歯科医師が丁寧に診査・診断を行い、最適な治療方針をご提案いたします。

親知らず抜歯のよくある質問

抜歯は痛いですか？

十分な局所麻酔により、抜歯中の痛みはほとんど感じません。術後の痛みも適切な鎮痛薬により管理可能です。

腫れはどの程度続きますか？

個人差がありますが、通常2-3日がピークで、1週間程度で改善します。無切開抜歯では腫れを大幅に軽減できます。

仕事への影響はありますか？

単純な抜歯であれば翌日から通常業務に復帰可能です。複雑な抜歯の場合は2-3日の安静をお勧めします。

抜歯後の食事はいつから
可能ですか？

麻酔が切れてから可能ですが、抜歯部位を避けて柔らかい食べ物から始めてください。

神経麻痺のリスクはありますか？

下顎の親知らずでは下歯槽神経麻痺のリスクがありますが、術前のCT診断により適切な術式を選択してリスクを最小限に抑えます。

抜歯後の穴はどうなりますか？

抜歯窩は血餅で満たされ、約1-2ヶ月で骨や歯茎が再生されて治癒します。