小児歯科

小児歯科とは

小児歯科は、お子様の口腔の健康を専門に扱う歯科の分野です。乳歯の萌出から永久歯への生え変わり、そして永久歯列が完成するまでの期間において、お子様の成長発育に合わせた専門的な歯科治療と予防管理を行います。

お子様の歯は大人の歯とは大きく異なる特徴があります。乳歯はエナメル質が薄く、虫歯になりやすいという特性があり、また子どもの心理的特性や行動特性を理解した上での治療アプローチが必要となります。

当院では、お子様が歯科治療に対してポジティブな印象を持ち、将来にわたって良好な口腔健康を維持できるよう、専門的な知識と技術をもってサポートいたします。

大人との違いと特徴

小児歯科治療の内容は基本的には成人の治療と変わりませんが、お子様特有の配慮が必要となります。

心理的・行動的特徴

お子様は大人と違って治療中に動いてしまったり、意思疎通が難しい場合が多くあります。恐怖心や不安感から治療を嫌がることも少なくありません。無理に治療を進めてしまうと、次回の来院時により強い拒否反応を示してしまい、結果として治療自体が困難になってしまう場合があります。

そのため、当院では個々のお子様の性格や成長段階を考慮し、ケースバイケースで治療方針を決定しています。お子様のペースに合わせて、段階的に治療への慣れを促していくことを大切にしています。

乳歯の特性

乳歯は永久歯と比較して、エナメル質が薄く象牙質の占める割合が大きいという特徴があります。そのため虫歯の進行が早く、神経に到達しやすい傾向があります。また、乳歯の根の下には永久歯の芽（歯胚）が存在するため、乳歯の治療や抜歯の判断には特別な配慮が必要です。

レントゲン撮影により、乳歯の下に永久歯が存在することを確認した場合は、乳歯を抜歯することもあります。一方で、永久歯の萌出時期を考慮して経過を観察し、自然な生え変わりを待つ場合もあります。

対応が困難な場合

どうしても治療が必要にも関わらず、お子様が治療を受けることができない場合は、安全のために保護者の方と相談の上、適切な体勢で治療を行うこともあります。それでも対応が困難な場合は、大学病院などの専門機関をご紹介させていただく場合もございます。

当院の小児歯科治療の流れ

治療のトレーニング

まず最初に重要なのが、お子様が歯科治療に慣れることです。歯科専用のユニット（治療チェア）に座れるか、座った後に各種治療器具を口腔内で使用できるかなどを確認していきます。

これができなければ治療以前の段階となってしまうため、必要に応じて月に1～2回程度のトレーニング期間を設け、徐々に歯科治療に慣れていただくことを大切にしています。このトレーニング期間は、お子様にとって歯科医院が「怖い場所」ではなく「安心できる場所」となるための重要な時間です。

口腔内清掃

治療のトレーニング段階をクリアできれば、次に歯科専用の回転ブラシや研磨材を使用した歯のクリーニングを行います。

この段階では、歯科特有の機械音や注水の音、吸引管の使用などに慣れていただきます。将来虫歯ができた際にスムーズに治療が受けられるよう、これらの器具や音に対する恐怖心をなくしていくことが重要です。

クリーニングにより、歯の表面に付着した汚れやプラークを除去し、口腔内を清潔な状態に保ちます。また、正しい歯磨き方法についても、お子様の年齢に応じて丁寧に指導いたします。

フッ素塗布

フッ素塗布は、小児歯科において非常に重要な予防処置の一つです。

フッ素の3つの効果

1. 再石灰化の促進初期の虫歯を修復する作用があります。
2. 歯質の強化歯のエナメル質を強化し、虫歯に対する抵抗力を高めます。
3. 酸産生の抑制虫歯菌の活動を抑制し、酸の産生を減らします。

フッ素塗布の虫歯予防効果は、永久歯では20％〜30％、乳歯では40％〜50％と報告されており、特に乳歯において高い予防効果が期待できます。

当院では、1歳からでも歯が生えていればフッ素塗布を行うことができます。この処置を通じて、お子様に歯科処置に慣れていただくという意味でも重要な役割を果たします。

シーラント

シーラントは、奥歯の噛み合わせ面にある深い溝を、歯を削ることなく封鎖する予防処置です。奥歯の溝は歯ブラシが届きにくく、虫歯になりやすい部位であるため、あらかじめシーラントで封鎖することで虫歯予防効果を高めることができます。

シーラントの特徴

• 歯を全く削らない非侵襲的な処置です
• 適応年齢は歯科的処置ができれば何歳でも可能です
• シーラント材料にはフッ素が含まれており、徐々に歯に浸透していきます
• フッ素入り歯磨き粉との併用により、さらなる虫歯予防効果が期待できます

シーラントは萌出したばかりの永久歯に対して特に効果的であり、6歳臼歯（第一大臼歯）への適用が推奨されています。

小児の虫歯治療

お子様の虫歯治療においても、基本的な治療手順は成人と同様です。しかし、お子様の特性を考慮した細やかな配慮が必要となります。

浅い虫歯の治療

初期の虫歯や浅い虫歯の場合は、虫歯の部分を最小限削除し、白い樹脂材料（コンポジットレジン）で修復します。治療時間が短く、お子様への負担を最小限に抑えることができます。

必要に応じて局所麻酔を使用しますが、お子様が痛みを感じないよう、麻酔の方法や量について特別な配慮を行います。

深い虫歯の治療

虫歯が深く、神経に近い場合は、神経を保護する薬剤を使用します。お子様の場合は、永久歯への生え変わり時期を考慮して、できる限り乳歯の神経を保存するよう努めます。

ただし、感染が進行している場合は、永久歯への悪影響を防ぐため、適切な時期に抜歯を検討することもあります。

乳歯の抜歯

自然な生え変わりで抜けない乳歯や、虫歯により保存が困難な乳歯については、抜歯を行います。抜歯の際は、お子様の不安を軽減するため、十分な説明と配慮を行います。

また、永久歯の萌出状況を考慮し、必要に応じてスペースの管理を行います。

小児歯科における予防の重要性

早期からの予防習慣

お子様の時期から正しい口腔ケア習慣を身につけることで、生涯にわたって健康な歯を維持することができます。当院では、年齢に応じた歯磨き指導や食事指導を通じて、お子様とご家族に適切なケア方法をお伝えします。

定期検診の大切さ

お子様の口腔内は成長とともに日々変化します。定期的な検診により、虫歯の早期発見・早期治療はもちろん、歯並びや噛み合わせの問題、歯の生え変わりの状況などを継続的にチェックすることができます。

また、定期的に歯科医院を訪れることで、お子様が歯科治療に慣れ、将来的な治療への不安を軽減することにも繋がります。

保護者の方への指導

小さなお子様の場合、保護者の方による仕上げ磨きが非常に重要です。当院では、効果的な仕上げ磨きの方法や、お子様の年齢に応じた口腔ケアのポイントについて詳しくご説明いたします。

また、虫歯になりやすい食べ物や飲み物、間食のタイミングなど、日常生活における注意点についてもアドバイスいたします。

年齢別の注意点とケア

0-2歳（乳歯の萌出期）

この時期は乳歯が萌出してくる時期です。歯の萌出に伴う歯肉の腫れや不快感に対するケア、初期の口腔清掃習慣の確立が重要です。

離乳食の進行に伴い、口腔機能の発達を促すための指導も行います。また、フッ素塗布により早期からの虫歯予防を開始します。

3-5歳（乳歯列完成期）

乳歯が生え揃い、本格的な口腔ケアが必要となる時期です。お子様自身での歯磨き習慣の確立と、保護者による仕上げ磨きの両方が重要です。

また、おやつの与え方や飲み物の選択など、食生活面でのアドバイスも重要になります。

6-12歳（混合歯列期）

乳歯から永久歯への生え変わりが始まる時期で、最も注意深い管理が必要な期間です。生え変わりの状況や永久歯の萌出位置、歯並びの発育などを継続的に観察します。

6歳臼歯（第一大臼歯）の萌出により、奥歯の清掃がより重要になります。シーラントによる予防処置も積極的に行います。

歯科治療を嫌がる
お子様への対応

段階的なアプローチ

治療を嫌がるお子様に対しては、無理に治療を進めるのではなく、段階的なアプローチを取ります。まずは歯科医院に慣れることから始め、徐々に治療器具に触れ、最終的に治療を受けられるよう導いていきます。

保護者の方との連携

ご家庭での声かけや準備も重要です。歯科受診前の心構えや、受診後のフォローについて、保護者の方と密に連携を取りながら進めていきます。

年齢に応じた説明

お子様の理解力に合わせて、治療内容をわかりやすく説明します。治療器具を実際に見せたり、どのような処置を行うかを事前に説明することで、不安を軽減します。

緊急時の対応

歯の外傷

転倒や事故により歯を打撲した場合、早急な対応が必要です。歯の脱落や破折が起こった場合は、できるだけ早くご連絡ください。適切な初期処置により、歯を保存できる可能性が高まります。

急性症状

激しい痛みや腫れなどの急性症状が現れた場合は、緊急対応いたします。お子様の苦痛を最小限に抑えるため、迅速な診断と治療を行います。

矯正治療との連携

歯並びや噛み合わせに問題がある場合は、適切な時期での矯正治療をご提案いたします。小児期からの早期介入により、より良い結果を得ることができる場合があります。

必要に応じて矯正専門医と連携し、お子様にとって最適な治療時期と方法をご提案いたします。