インプラント治療

インプラント治療とは

インプラント治療は、失った歯を回復するための最も先進的で効果的な治療法の一つです。チタン製の人工歯根（インプラント体）を顎の骨に埋入し、その上に人工の歯冠を装着することで、天然歯に限りなく近い機能と見た目を取り戻すことができます。

従来の入れ歯やブリッジとは異なり、インプラントは周囲の健康な歯に負担をかけることなく、単独で機能します。チタンは生体親和性に優れており、骨と直接結合する「オッセオインテグレーション」という現象により、安定した基盤を提供します。この特性により、天然歯と同様の咀嚼力を発揮し、長期間にわたって安定した機能を維持することが可能です。

当院では、最新のCT撮影技術とマイクロスコープを活用し、精密な診断と安全で確実な手術を行っています。患者様一人ひとりの骨の状態や咬合状況を詳細に分析し、最適な治療計画を立案いたします。

インプラント治療の適応症

単独歯欠損

1本の歯を失った場合、従来はブリッジ治療が一般的でしたが、健康な両隣の歯を削る必要がありました。インプラント治療では、欠損部位のみに人工歯根を埋入するため、周囲の健康な歯を傷つけることなく治療できます。特に前歯部では、審美性の回復にも優れた効果を発揮します。

複数歯欠損

連続して複数の歯を失った場合も、インプラント治療の良い適応となります。欠損の範囲に応じて適切な数のインプラントを配置し、ブリッジ形式で上部構造を製作します。従来の部分入れ歯と比較して、違和感が少なく、しっかりと固定されるため、食事や会話における制限がほとんどありません。

無歯顎（全ての歯を失った状態）

全ての歯を失った場合でも、インプラント治療により機能回復が可能です。4〜6本のインプラントを戦略的に配置し、オールオン4やオールオン6といった治療法により、固定式の人工歯を装着します。従来の総入れ歯と比較して、咀嚼効率が大幅に向上し、食べ物の制限がほとんどなくなります。

入れ歯の固定源として

既存の入れ歯が不安定でお困りの方には、インプラントを支台とした入れ歯（インプラントオーバーデンチャー）という選択肢があります。少数のインプラントで入れ歯を確実に固定することができ、総入れ歯よりもはるかに安定した咀嚼機能を得ることができます。

インプラント治療のメリット

1. 天然歯に近い機能性 インプラントは骨としっかりと結合するため、天然歯とほぼ同等の咀嚼力を発揮できます。硬い食べ物でも安心して噛むことができ、食事の楽しみを取り戻すことができます。また、発音への影響も最小限に抑えられるため、日常生活における支障がほとんどありません。
2. 優れた審美性 特に前歯部においては、天然歯と見分けがつかないほど自然な仕上がりを実現できます。歯茎の形態も自然に再現され、笑顔に自信を持つことができます。セラミック製の上部構造により、変色の心配もありません。
3. 周囲の歯への影響がない ブリッジ治療では健康な隣接歯を削る必要がありますが、インプラント治療では欠損部位のみを治療するため、周囲の歯に負担をかけません。これにより、口腔内全体の長期的な健康維持に寄与します。
4. 長期的な安定性 適切なメンテナンスを行うことで、インプラントは20年以上の長期間にわたって機能することが可能です。初期投資は高額でも、長期的な観点から考えると非常にコストパフォーマンスに優れた治療法と言えます。
5. 骨の吸収抑制 歯を失うと、その部分の顎骨は徐々に吸収（やせ細り）していきます。インプラントが骨に適切な刺激を与えることで、この骨吸収を抑制し、顔貌の変化を防ぐことができます。

当院のインプラント治療の特徴

デジタルを活用した診断技術

当院では、最新のCT撮影装置を導入し、3次元的な精密診断を行っています。骨の密度、厚み、神経の位置などを詳細に把握することで、安全で確実な手術計画を立案します。また、コンピューターシミュレーションにより、最適なインプラント埋入位置と角度を事前に決定します。

低侵襲手術への取り組み

マイクロスコープを活用した精密手術により、組織へのダメージを最小限に抑えます。適応症例では、フラップレス手術（歯茎を切開せずに行う手術）も実施し、術後の腫れや痛みを軽減します。患者様の負担軽減を常に心がけた治療を提供しています。

充実したアフターケア体制

インプラント治療の成功には、手術後のメンテナンスが非常に重要です。当院では、専任の歯科衛生士による定期的なメンテナンスプログラムを提供し、インプラント周囲炎の予防に努めています。また、患者様への適切なホームケア指導も行い、長期的な成功をサポートします。

インプラント治療の流れ

1. 初回カウンセリング・診査診断 まず、患者様のお悩みやご希望を詳しくお聞きし、口腔内の状態を精査します。CT撮影により骨の状態を3次元的に評価し、血液検査により全身状態を確認します。これらの情報を総合して、インプラント治療の適応性を判断し、最適な治療計画を立案します。
   この段階では、治療期間、回数、リスク、代替治療法についても詳しくご説明し、患者様が納得されてから治療を開始します。十分な時間をかけて相談し、不安や疑問を解消していただくことを重視しています。
2. 一次手術（インプラント埋入） 局所麻酔下で、計画に基づいてインプラント体を顎骨に埋入します。手術時間は本数にもよりますが、1本あたり30分程度です。当院では、痛みを最小限に抑えるため、麻酔の技術にも十分に配慮しています。
   手術後は、安静にしていただき、処方薬の服用により痛みや腫れをコントロールします。通常、1週間程度で日常生活に支障のない状態まで回復します。
3. 治癒期間（オッセオインテグレーション） 埋入したインプラントと骨が結合するまで、通常3～6ヶ月の治癒期間が必要です。この期間中は、インプラント部位に過度な力がかからないよう注意していただきます。必要に応じて、仮歯を装着し、見た目や機能に配慮します。
4. 二次手術（土台の装着） インプラントと骨が完全に結合したら、二次手術を行い、アバットメント（土台）を装着します。この手術は比較的簡単で、時間も短く済みます。
5. 上部構造の製作・装着 歯科技工士が精密に製作したセラミック製の人工歯を装着します。色調や形態を天然歯に合わせて調整し、咬合バランスも最適化します。装着後は、咬み合わせの微調整を行い、快適な使用感を実現します。

骨移植手術について

サイナスリフト

上顎臼歯部では、上顎洞（副鼻腔の一つ）の存在により骨の高さが不足することがあります。サイナスリフトは、上顎洞底部を持ち上げ、その空間に骨補填材を填入することで骨の高さを増加させる手術です。当院では、患者様の状態に応じて、適切な術式を選択します。

ソケットリフト

比較的軽度の骨不足の場合に適用される、より侵襲の少ない骨増成手術です。インプラント埋入と同時に行うことが可能で、治療期間の短縮につながります。

GBR（骨再生誘導法）

骨の幅や高さが不足している部位に対して、特殊なメンブレンを用いて骨の再生を誘導する治療法です。インプラント埋入前、または同時に行うことで、十分な骨量を確保します。

インプラント治療における
安全性への配慮

全身管理

糖尿病、高血圧、心疾患などの全身疾患をお持ちの方でも、適切な管理の下でインプラント治療を受けていただくことが可能です。必要に応じて、かかりつけ医との連携を図り、安全な治療を提供します。

感染予防対策

当院では、厳格な滅菌システムを構築し、院内感染の防止に努めています。手術器具はすべて滅菌され、使い捨て可能なものは患者様ごとに新しいものを使用します。また、手術室は清潔な環境を維持し、安全な手術を実施します。

緊急時対応体制

万が一の緊急事態に備え、AED（自動体外式除細動器）や酸素、救急薬品を常備しています。また、スタッフ全員が救急蘇生法の訓練を受けており、迅速な対応が可能です。

メンテナンスの重要性

インプラント治療の長期的成功のためには、適切なメンテナンスが不可欠です。インプラント周囲炎は、天然歯の歯周病よりも進行が早く、重篤になりやすいため、予防が最も重要です。

定期検診

3〜6ヶ月ごとの定期検診により、インプラント周囲の状態をチェックします。レントゲン撮影による骨の状態確認や、咬合状態の評価も行います。

プロフェッショナルクリーニング

専門の器具を用いたプロフェッショナルクリーニングにより、インプラント周囲の細菌の除去を行います。インプラント専用の清掃器具を使用し、傷をつけることなく効果的に清掃します。

ホームケア指導

患者様ご自身で行っていただくホームケアの方法を詳しく指導します。インプラント専用の歯ブラシやフロスの使用法をマスターしていただき、日常的な清掃を徹底していただきます。